お客様と背景
※ 公開にあたり、社名・人名・取引先名などはすべて架空のサンプルに置き換えています。
お客様は中部地方で電源タップなどの配線器具を製造するメーカーA社(年商約10億円)。販売管理はAS400上の基幹システムが長年安定稼働している一方、出荷の現場と基幹のあいだは人手がつないでいました。製造業向けITサービスを提供するパートナー企業B社を通じて、当社が出荷管理システムの試作と提案を担当しました。
どの出荷がどの工程まで進んだか、事務所と倉庫現場で共有する仕組みがなく、確認のたびに電話と往復が発生。
売上伝票と倉庫移動レコードの突き合わせが担当者の経験頼み。差異の原因調査に時間がかかり、後工程が止まることも。
出荷単位に紐づく部材が揃っているかの確認が目視中心で、誤梱包・入れ漏れのリスクが残っていた。
進め方 — 資料ではなく「動く試作品」で合意形成
要件定義の前に、クリックできるプロトタイプを短期間で作成
この案件で当社が選んだのは、分厚い提案資料を書く前に実際に動くHTMLプロトタイプを数日で作り、画面を触りながら業務を確認してもらう進め方です。効果はすぐに表れました。パートナー企業の担当者から「工程の構成が実際と少し違う」「1日複数便で回す運用は、この現場には無い」といった具体的な指摘が返ってきたのです。
文章の要件定義書では読み飛ばされてしまうような業務の機微が、動く画面を前にすると「ここが違う」と一言で出てくる。指摘はその日のうちにプロトタイプへ反映し、数回のやり取りで工程①〜⑥の構成が確定しました。
プロトタイプ画面
画面内の取引先名・数値はすべて架空のサンプルデータです
出荷進捗盤 — 業務フローと1対1のホーム画面
縦に工程①〜⑥の作業ステップを時間順に並べ、それぞれの「入力→出力」も表示。朝イチにこの画面を開けば、どこまで自動で進み、いま人が何をすべきかが一目で分かります。やるべきことは上部の「本日の要対応」に集約され、クリックでそのまま作業画面へ。
① 差異の目視チェック — 人が見るのは例外だけ
ルールで機械的に判定できる伝票は自動で通し、判定できなかった差異だけを推定原因つきで提示。担当者は「続行/保留」を選ぶだけで、チェック完了と同時に②採番→ラベル発行→③連携まで自動で流れます。
⑤ 梱包の部材照合 — スキャンだけで誤出荷を防ぐ
梱包場のタブレット+Bluetoothハンディスキャナで動く画面。出荷Noを選ぶとぶら下がる部材が一覧になり、部材ラベルを読むたびに行が緑に変わります。全部材が揃うと「揃いOK」、箱詰めして「梱包終了チェック」を押せば、完了情報が自動で後続システムへ送信されます。別の出荷Noの部材を読めば即エラー。数量不足のままでは終了チェックが押せません。
終わった仕事は消えていく — 完了のグレーアウト
完了した工程は行ごとグレーに沈み、残っている仕事だけが色付きで浮かびます。「本日の要対応」が空になれば、その日の出荷業務は完了。全工程にはメモを残せるので、担当交代の申し送りや取引先との調整記録も工程に紐づいて蓄積されます。
技術構成(試作時点)
| 画面 | ブラウザで動作するWebアプリケーション(事務所PC・梱包場タブレット共通) |
|---|---|
| スキャン | 市販Bluetoothハンディスキャナ(HID接続)。読取文字列がそのまま画面に入力されるため、スキャナ用の特別な開発が不要 |
| 外部連携 | 基幹(AS400)・ピッキングシステム・後続システムとはCSVファイル連携 |
| 稼働環境 | オンプレミス/クラウドのどちらにも対応できる構成(要件定義で確定) |
試作がもたらしたもの
動く試作品を挟んだことで、要件定義の開始前に工程構成・スキャン方式・連携方式・画面の操作感まで関係者の認識が揃いました。「チェックの仕方はこれでいいのか」「この現場に複数便の運用は無い」といった指摘が早い段階で出て、作ってから手戻りするリスクを要件定義の前に潰せたのが最大の成果です。
この⑤(梱包の部材照合)のリクエストに対しても、翌日には操作できる画面で回答。「文章で説明する代わりに、触れるものを出す」やり取りを重ねて、概算見積・要件定義フェーズへと進みました。
その先の構想 — 段階的なAI活用
このシステムは、出荷実績・差異と対応の履歴・全工程の完了時刻・メモが日々の運用の中で自然に蓄積される構造になっています。この記録を土台に、段階的なAI活用を構想しています。
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